文化財の保存・活用に関わる担当者・機関の立場から

ARIADNEplusの仕組み

ARIADNEplusのカタログは「時間」「空間」「モノ」、または統制語彙のリストで検索できます。検索すると、選択条件に応じたデータセットの一覧がデータ概要と元データへのリンクとともに検索結果として表示されます。それにはデータ提供機関によって定められた規定に基づいてアクセスすることができます。このプロジェクトではデータそのものの集計や移行などはせず、データセットのメタデータだけを扱っています。元データは提供機関が維持管理しています。現在、約200万件ものデータセットがカタログ化されています。この200万件のデータセットは膨大な情報量です。なぜなら1件のデータセットは1冊の報告書にそれに含まれているすべての画像と図面のセットであったり、数千件もの記録を含んだデータベースだったりします。カタログ化されたコンテンツの種類は、出土品の個別データから、出土品目録や発掘調査報告書まで、多岐にわたります。

ARIADNEplusのカタログは誰にでも自由に無料で利用いただけます。

ARIADNEplusが扱うテーマは前身プロジェクトであるARIADNEから地理的にも時間軸的にも範囲が広がっており、また、科学分析の結果等も扱うことになりました。そして、これらのデータをさらに加工しやすく、再利用しやすくできるようなサービスの提供も予定しています。ARIADNEplusは文化財の保存・活用に関わる担当者・機関にとって有用なツールであると考えています。

 

ARIADNEPlusパートナーシップ

ARIADNEplusには現在、ヨーロッパ23か国と日本・アメリカ・アルゼンチン・イスラエルの4か国から合計41組織が参加しています。

 

参加機関一覧はこちらでご覧いただけます。

 

データポリシーに関する活動

ARIADNEplus事業では、「FAIR原則」※や信頼できるデータリポジトリの認証基準など、各種のデータポリシーに関する情報を集めたり、これらのポリシーを推薦したりする活動を行います。例えば、考古学研究に特化した、EUの規格や要件に適合したデータマネジメントプラン(DMP)※※のひな型を配布する予定です。

また、考古学データのデジタルリポジトリの作成、管理、維持に関するガイドラインを作成する活動も行います。ヨーロッパでは物理的な保管施設が危機的状況に陥っている一方、デジタルアーカイブも様々な問題と直面しています。このため、物理的なアーカイブとデジタルリポジトリの両方を取り扱うガイドラインの策定が必要です。そうしたガイドラインにはとりわけ文化財の保存・活用に関わる担当者・機関が関心を持つでしょう。

さらに、我々の活動にはデジタルデータの利用者と管理者の両者を対象とした研修の開催も予定されています。このような活動をよりスムーズに行うため、現在英語でしか作成されていない資料を様々な言語に翻訳することを計画しています。諸文書を翻訳する際、それぞれ地域のニーズや制度にも配慮してローカライゼーションする予定です。

現時点では研究活動に関わるデータポリシーの整理・整備しか想定していませんが、ニーズがあれば、遺跡の管理・保護に関わるデータ等に関するポリシーも取り扱うことができます。

 

※FAIR原則…見つけられる、アクセスできる、相互運用できる、再利用できる、といったデータ公開の適切な実施方法を表現したデータ共有の原則。

※※DMPの作成はEUの一部の国ではすでに義務付けられていますが、今後は助成金を受けて行われるすべての研究について義務づけられる予定です。

 

コミュニティ活動

ARIADNEplusの目標の一つとして、情報交換がさかんなコミュニティを形成することがあります。そのためにワークショップ、セッション、ミーティングなどへの参加・開催、および専用のコミュニケーションチャンネルの設置などを計画しています。コミュニティ形成を行うにあたり、特に考古学データセットの作成・処理・管理の途上にある地域や国に力を入れる予定です。(たとえば、中央・南ヨーロッパではすでにタスクフォースが設置されています)。特定の地域を対象とするタスクフォース以外にも、様々なタスクフォースを設置します。たとえば、博物館や遺跡を対象としたもの、文化財の保存・活用に関わる担当者・機関、研究者、教師などを対象としたものも設置する予定です。

コミュニティ活動には多くの研修が予定されています。研修には直接参加型と遠隔参加型の両方が想定されています。

ARIADNEplusのコミュニティ活動には、個々のプロジェクトでのARIADNEplusの専門家チームからの直接的なサポートも予定されています。つまり、特定の少人数のグループに対して研修やワークショップなど知識移転活動を行う予定です。

全ての研修活動について、参加者の費用は無料で、ほとんどの研修で旅費や滞在費の一部支給が行われます。資料は通常英語で作成されますが、要望が多数あれば翻訳版を提供することもできます。

 

データサービスの提供

ARIADNEplusにおいて、各種データサービスの提供・公開も重要視されています。本プロジェクトで提供するデータサービスには、データ分析(例えばデータマイニングや自然言語処理)やデータ合成(例えば3Dデータの視覚化、地図上や時系列上でのデータ検索、Linked Dataを利用したデータ閲覧)などがあります。

さらに、ARIADNEplusでは、複数の言語をサポートし、各言語で検索が可能です。

また、サービスの活用事例を実際に見ていただくために、いくつかのアプリケーションを開発する予定です。個別のアプリケーションの開発に関しては対応できかねますが、ARIADNEplusが提供するアプリケーションには、文化財の保存・活用に関わる担当者に役立つものがきっとあります。

 

ARIADNEplusができること

文化財の保存・活用に関わる担当者・機関は、ARIADNEplusのカタログを利用して、管理している遺跡に直接関係する調査を調べたり、他地域での類例について情報を入手することで、管理している遺跡への理解を深めることができます。また、ARIADNEplusが提供する各種データポリシー、ガイドライン、研修などを利用することにより、考古学データの管理・活用に関する、より専門的な知識を得ることができます。

ARIADNEplusはデジタル記録のリポジトリの作成や改善を目的とする、個別の事業への支援も行っています。カタログへのメタデータの登録は無料かつ大歓迎です。必要であれば、登録作業の支援も無料で行います。

つまり、ARIADNEplusは各機関の取り組みをより高次元的なものにできます。さらに、提供するサービスの品質改良にも役立ちます。

詳細に関しては、国や地域のARIADNEplusのパートナーあるいはプロジェクト事務局までお問い合わせください。